乳酸菌入り資材や腐植酸抽出液を利用して飼育したブロイラーにおける空腸,回腸,ファァブリキウス嚢の遺伝子発現

研究紹介

空腸,回腸,ファブリキウス嚢の遺伝子発現

○梅田雅・上田真里・岩永咲良・西山由紀・石川千洋1・小林元太・和田康彦
(佐賀大学農・1(株)クリエイト)

【目的】
 家畜家禽産業において近年はプロバイオティクスをはじめとする自然由来の飼料添加物の模索が行なわれている. 演者らは乳酸菌資材がレイヤーの小腸の遺伝子発現を変化させ,変化する遺伝子の大半が免疫に関係する遺伝子であることを報告した. 今回はブロイラーでも同様の効果が得られるかの検討を行なった.
【方法】
 チャンキーの初生雛28羽を取り寄せ,乳酸菌資材5%添加区,腐植酸抽出液1万倍希釈区,腐植酸抽出液2万倍希釈区,コントロール区の4区を設定し,50日齢まで飼育した. 乳酸菌はくみあい標準配合飼料はかたブロイラー前期,後期仕上げに添加し,腐植酸抽出液は飲水に添加した. 飼育期間中は全ての個体の体重を毎日記録した. 飼育終了後,空腸と回腸,ファブリキウス嚢の組織サンプルを採取し,各サンプルからtotal RNAを抽出した. One Step SYBR PrimeScript RT-PCR Kit II(タカラバイオ)を用いてRT-qPCRを行ない,Cq値を得た. プライマーはPrimer-BLASTを用いてイントロンを挟むように設計された. 内部標準をβ-アクチンとし,⊿⊿Cq法によってコントロール区に対する相対遺伝子発現量を推定した. また空腸組織においてはパラフィン包埋の後HE染色を行ない,空腸の組織学的変化を調査した.
【結果】
 今回の試験では体重に各処理の影響は見られなかった. 遺伝子発現の変化については,空腸ではinterferon-induced protein with tetratricopeptide repeats 5遺伝子のみ有意差があり,腐植酸2万倍希釈区に比べ腐植酸1万倍希釈区で発現量が2.7倍増加した. 回腸ではlysozyme g-like 1 (LG1)遺伝子, lymphocyte antigen 6 comple, locus E (LY6E)遺伝子, 5-hydroxytryptamine receptor 1F, G protein-coupled(HTR1F)遺伝子に有意差があり, コントロールと比較してLG1は乳酸菌資材区と腐植酸1万倍希釈区の発現が減少し,LY6EとHTR1Fは乳酸菌資材区,腐植酸2万倍希釈区,腐植酸1万倍希釈区で発現が減少した. ファブリキウス嚢についてはLY6EとHTR1Fで有意差が見られ,コントロールと比較してLY6Eは乳酸菌資材区,腐植酸1万倍希釈区で発現が増加し,HTR1Fは腐植酸1万倍希釈区のみで発現が増加した. 空腸組織の変化は,コントロールと比較して乳酸菌資材区,腐植酸1万倍希釈区で陰窩の厚みが増した. なお今回の成果は,佐賀県地域産業支援センターの「基礎研究等助成事業」」の補助金を活用して得られたものである.

日本暖地畜産学会 2017年10月

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