佐賀大学農学部生物生産学科 畜産学実験実習 講義テキスト 科目ホームページ
モル数の計算と試薬の調合
モル(mole, mol)
物質の量を表す国際単位系の基本単位。
アボガドロ数の構成要素を含む物質の集団を1モルと定義する。
モル濃度(M, mol/l)
溶液1リットル中に存在する当該物質のモル数。
規定度
溶液1ルットル中のグラム当量。モル濃度に酸または塩基の価数を
かけたもの。
TEの作り方
DNAなどの核酸用のバッファーとしてTEがよく用いられる。
TEの最終濃度は10mM Tris-HCl(pH 8.0), 1mM EDTA (pH 8.0)である。
いろいろな試薬を作成する時に濃度の濃いストック溶液を作成しておくと
便利である。通常、1M Tris-HCl(pH 8.0)と500mM EDTA (pH 8.0)を作成しておく。
1Mは1000mMなので、1M Tris-HCl(pH 8.0)を100倍に薄めれば良い。
最終量200mlのTEを作成する時は、200ml/100 = 2ml の1M Tris-HCl(pH 8.0)
を入れれば良い。
EDTAは500倍に薄めれば良いので200ml/500 = 0.4ml の500mM EDTA (pH 8.0)
が必要となる。
従って、2ml の1M Tris-HCl(pH 8.0)と0.4ml の500mM EDTA (pH 8.0)を
ビーカーに入れて、200ml-2ml-0.4ml = 197.6mlの超純水を加えると
200mlのTEができる。
STEの作成
STEの最終濃度は
- 10mM Tris-HCl (pH 8.0)
- 1mM EDTA (pH 8.0)
- 150mM NaCl
ストックソリューションは
- 1M Tris-HCl (pH 8.0)
- 500mM EDTA (pH 8.0)
- NaCl (MW=58.44, 試薬特級)
STEを300ml作成するとすると、
1M Tris-HCl 300ml/100 = 3mlと500mM EDTA 300/500 = 0.6ml必要。
NaClは固体なのでモル数を計算して、58.44 x 0.15M x 300ml /1000ml = 2.63g
ビーカーにスターラーバーを入れ、1M Tris-HCl 3mlと500mM EDTA 0.6ml
およびNaCl 2.63gを加え、さらに超純水250mlを加えてスターラーで
溶かす。
完全に溶けたら、ビーカーの中身をメスシリンダーに移し、
超純水で300mlまでメスアップする。
演習問題
(1)500mlのTEを作成するには1M Tris-HCl (pH 8.0)と500mM EDTA (pH 8.0)が
それぞれどれだけ必要か?
(2)500mlのSTEを作成するには1M Tris-HCl (pH 8.0)と500mM EDTA (pH 8.0)と
NaClがそれぞれどれだけ必要か?
(3)10M 酢酸アンモニウム(MW=77.08)を 500ml作成したい。酢酸アンモニウムは
何グラム必要か?
(4)電気泳動用のバッファーである10xTAEを作成したい。
それぞれ試薬の最終濃度は
- Tris 0.4M
- 氷酢酸 0.4M
- 0.5M EDTA (pH 8.0) 0.01M
である。それぞれの試薬の必要量はいくらか?
液体試薬の計量
- 10ml以上の液体を計量するにはメスシリンダーを使ってください。目盛の読み方を間違えないように。
- 1-10ml程度の液体を計量する時はメスピペットを使ってください。安全ピペッターは注意しないと液をピペッターの中に吸い込んでしまいます。口では絶対に吸わないこと。
- 1ml以下の液体を計量する時はマイクロピペットを使用します。通常は、ピペットチップは毎回新しいのを使います。
- マイクロピペットは1000マイクロ、200マイクロ、100マイクロ、20マイクロ、10マイクロのがあり、チップは大きさによって3種類あります。
- マイクロピペットは計量に個人差がでやすいので、十分練習すること。また、液をピペットの先まで吸い込んでしまうとコンタミの原因になるので、吸い込んだら必ずDW水でピペットの先を洗浄し、キムワイプでそのDW水をていねいに拭き取って下さい。
- エタノールなどの蒸発しやすい液体は手早く計量すること。
固体試薬の計量
- 固体の試薬は通常、電子上ざら天秤で重さを計ります。
- 計る量に応じて、天秤を選んでください。精密な天秤で重いものを計ると故障の原因になります。
- 試薬紙または小さく軽いビーカーを天秤の上にそっと置いて、ゼロ点調節します。
- スパーテルを使って少しずつ試薬瓶から試薬を取り出し、天秤に衝撃を与えないように置いていきます。
- 多すぎても試薬瓶には戻さないように。また、試薬瓶のなかにゴミが入らないように、使用後はただちに蓋をすること。
試薬の調合
- 通常の液体試薬は大きめのビーカーに入れて調合し、滅菌済の試薬瓶に保存します。
- 固体試薬がすぐにとけない場合には、スターラーを使って融かします。当研究室ではコンタミを防ぐためにできるだけスターラーはクリーンベンチの中で使用しています。
- 調合した試薬はオートクレーブで滅菌します。オートクレーブできないものは、ミリポアフィルターでろか滅菌します。
最終更新年月日 2001年11月27日
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