佐賀大学農学部応用生物科学科 動物遺伝育種学 講義テキスト 科目ホームページ
家畜におけるゲノム解析とその応用
親子鑑別
子は両親から半数の染色体を遺伝する。
従って、両親の遺伝子型と子の遺伝子型に矛盾があれば親子関係は否定される。
しかしながら、たとえ矛盾がなくても少数の遺伝子座のみを検査しただけでは親子関係を証明したことにはならない。
実際の検査のデータから親子関係を否定できる確率のことを排除率(exclusion probability, EP)と呼ぶ。
排除率は検査する遺伝子座数が増えるほど増加するので、
多座位を効率的に検査できるマイクロサテライトマーカーの利用が有効である。
遺伝病の責任遺伝子の解明
家畜家禽においても遺伝病の責任遺伝子の解明が進められている。
ウシにおいてはすでに白血球粘着不全症(BLAD)、ウリジル酸合成酵素欠損症、
シトルリン血症、バンド3欠損症、第XIII因子欠損症、筋肥大症などの
遺伝病の責任遺伝子が明らかにされ、遺伝子診断法も確立されている。
QTL解析とは
- 量的形質 <--- たくさんの遺伝子座ポリジーンに支配されている
- QTL(Quantitative Trait Loci) : 量的形質に関与している遺伝子座
- DNAマーカーと量的形質との連鎖を調べる
- 連鎖地図上にQTLの位置をマッピングする
QTL解析は何故必要か
- 遺伝率の低い形質(繁殖形質など)
- 通常の選抜では改良は困難 --> 他品種からの遺伝子導入 --> 当該形質に関与する遺伝子のみ効率的に導入したい
- 負の遺伝相関のある複数形質の改良
- 通常の選抜では改良は困難 --> ポリジーンの中には1つの形質のみに関与する遺伝子もあるかもしれない
- 世代間隔の縮小
- 生まれるとすぐにDNAをタイピング可能
QTL解析の問題点
- 膨大な経費と労力がかかる
- マーカーの開発
- 連鎖地図作成のための家系の構築
- 形質値の測定
- マーカー数 x 個体数 のタイピング
- その家系にしかマーカーアシストセレクションはできない
- QTLをマッピングできても、遺伝子までたどりつくには、さらに長い道のりが必要
家畜におけるゲノム解析の現状
参考図書
動物遺伝育種シンポジウム組織委員会 編、「家畜ゲノム解析と新たな家畜育種戦略」、シュープリンガーフェアラーク
最終更新年月日 2009年7月21日
佐賀大学 農学部 動物資源開発学分野 和田研究室
ywada@cc.saga-u.ac.jp