佐賀大学農学部応用生物科学科 動物遺伝育種学 講義テキスト 科目ホームページ
選抜と交配
選抜とは
- 家畜の育種改良のための基本的手法
- 良いものを残し、悪いものを淘汰する
何にもとづいて選抜するのか
- 表現型 <--- 奇形、遺伝病、質的形質(毛色)
- 遺伝型 <--- DNAマーカー
- 育種価推定値 <--- 量的形質(発育、乳量など)
どのように選抜するのか
- 個体選抜
- 集団から上位の一定割合の個体を選抜する
- 家系内選抜
- 量的形質で家系間での環境変異が大きい場合には、各家系の上位個体を同数ずつ選抜する
- 家系選抜
- 量的形質で遺伝率が低い場合には、家系単位で選抜する場合もある
- 切断型選抜
- 最上位個体から一定割合まで選抜する(ある淘汰水準以上の個体を全て選抜する)
- 非切断型選抜
選抜の効率は?
- 選抜差(S)
- 選抜された個体群の平均と集団平均との差
- 選抜強度(標準化選抜差)(i)
- 選抜差 / 表型標準偏差
- 遺伝的改良量(delta G)の予測
- 遺伝率 x 選抜差 = 選抜強度 x 相加的遺伝標準偏差 x 選抜における正確度(r pg)
- 遺伝的改良速度
- 1世代当たりの遺伝的改良量 / 世代間隔(I)
- 選抜効率
- 2つの育種計画において予想される遺伝的改良量の比
選抜の結果の分析
- 選抜反応(R)
- 選抜後の集団平均と選抜前の集団平均の差
- 直接選抜反応と間接選抜反応
- 選抜形質と遺伝相関がある形質も変化する
- 遺伝的改良量の推定
- 集団平均は変動するので、BLUP法などを用いて統計的に推定する
- 実現遺伝率
- 実現遺伝率 = 選抜反応/選抜差
- 選抜限界
- 近交退化
ヘテローシス
血縁的に遠い両親の間に生まれた子供は、
繁殖形質などいろいろな形質で両親平均よりも優れた能力を示すことが多い。
これをヘテローシス効果という。
ヘテローシス効果は繁殖形質の他、病気に対する抵抗性や育成率、発育などの形質において認められることが多い。
品種間交雑
豚や鶏の現場では、積極的にヘテローシス効果を利用するために、
系統間あるいは品種間の交配が盛んに利用されている。
通常は2つの原々種系統間のF1をさらに別の原種系統に交配する
3元交配が実施されている。
このように品種間交雑を行うと、一般の農家レベルでは交雑種しか利用できないため、
いったん優れた原々種系統を作出した企業にとっては、
毎年確実に種畜を販売できるというメリットがある。
参考図書
佐々木義之 著、「動物の遺伝と育種」、朝倉書店
最終更新年月日 2009年7月21日
佐賀大学 農学部 動物資源開発学分野 和田研究室
ywada@cc.saga-u.ac.jp