佐賀大学農学部応用生物科学科 動物遺伝育種学 講義テキスト 科目ホームページ
遺伝子とDNA
メンデルの優性の法則
メンデルはエンドウマメを材料に、草丈の高いものと低いものを交配したところ、
雑種第1世代は全て草丈の高いものとなった。
メンデルの分離の法則
上記の雑種第1世代(F1)どうしを交配すると、草丈の高いものが787個体、草丈の低いものが277個体であった。
これはほぼ3:1の割合である。
用語の定義
- 卵や精子、あるいは植物でそれらに相当するものを配偶子(gamete)という
- 2つの配偶子が受精して融合したものを接合体(zygote)という
- 遺伝的な因子を遺伝子(gene)と呼ぶ
- 同一因子を2つ持つ接合体をホモ接合体(homozygote)と呼び、異なる因子を2つ持つ接合体をヘテロ接合体(heterozygote)と呼ぶ
- 遺伝的な構成を遺伝子型(genotype)と呼び、測定可能な形質を表現型
(phenotype)と呼ぶ
メンデルの独立の法則
丸い黄色の種子をつけるものと皺があって緑色の種子をつけるものを交配すると、
F1では全ての個体が丸くて黄色の種子をつけた。
このF1を自家受粉して556個のF2種子が得られた。
その内訳は丸くて黄色315、皺で黄色101、丸くて緑色108、皺で緑色32であり、
ほぼ9:3:3:1の割合になった。
上記の結果より、メンデルは1対の遺伝子が他の1対の遺伝子とは独立に分離していると結論付けた。
遺伝子の特性
- 遺伝子は遺伝情報を蓄えて、細胞から細胞、世代から世代へ受渡しをする
- 遺伝子は細胞分裂ごとに自己複製する
- 遺伝子複製時の誤りもそのまま伝えられる
- 遺伝情報は解読されて、表現型に影響を与える
DNAの構造
DNA(デオキシリボ核酸)は遺伝情報の担い手(媒体)である。
DNAは非常に長い2重らせん構造の糸状の構造をしており、糖とりん酸が
交互に並んでいる。
2本鎖の糖(デオキシリボース)の部分に塩基対がある。
塩基は4種類(アデニン、グアニン、チミン、シトシン)であり、それぞれ
A, G, T, Cと略記する。
4つの塩基はAとT、CとGの組み合わせのみ塩基対を形成する。
DNAの複製
2本鎖のDNAがほどけて1本鎖になり、それぞれに相補的な鎖を追加すれば
DNAは複製できる。
転写と翻訳
- DNAはメッセンジャーRNA(mRNA)に転写される。
- mRNAはスプライシングされて核外に出て行く
- 特異的なアミノ酸をつけた転移RNA(tRNA)がmRNAの暗号にそって並んでいく
- アミノ酸がmRNAの暗号の順序で結合し、他の酵素によって一部を切断されたり、
金属原子を取り込んだり、
自らを折り畳んだりして成熟したタンパク質になる。
スプライシング
参考図書
J.F.クロー著、「クロー 遺伝学概説」、培風館
A.ローラー著、「分子生物学入門」、培風館
最終更新年月日 2009年7月21日
佐賀大学 農学部 動物資源開発学分野 和田研究室
ywada@cc.saga-u.ac.jp