佐賀大学農学部 応用生物科学科 動物資源開発学分野 和田研究室

佐賀大学農学部応用生物科学科 生物情報処理演習 講義テキスト  科目ホームページ


多重比較

平均値の差の検定は2集団間に差があるかどうかを調べるものでした。 分散分析は3以上の集団間に差があるかどうかを調べる手法と考えることもできます。 しかし、分散分析では要因が有意かどうかしか検定することはできません。 分散分析のテキストの例で言えば、実際に一番優れている飼料はどれか、 という問いには分散分析は答えることができません。 それではどうするかというと、一番簡単な方法は、それぞれの飼料について 総当たりで平均値の差の検定を行うというものです。

しかしながら、個々の検定が95%の信頼度であったとしても、 総当たりで検定を行うと多重比較全体での信頼度ははるかに低いものに なってしまいます。 そこで、多重比較全体での信頼度をあげるためにいろいろな方法が 考案されてきました。ここでは、畜産分野で良く使われるダンカンの 多重範囲検定とチューキーの方法を取り上げます。

ダンカンの多重範囲検定

ダンカンの多重範囲検定は有意差が出やすいことから畜産分野で良く 使われますが、実際の過誤の確率が高くなりやすいのが欠点です。 以下に示す多重範囲検定係数MRTを算出して、 平均値の差の方が大きければ有意差ありと判断します。

MRT = qp(r,df) sqrt(MSE/H)

ここで、qp(r,df)は確率p、処理の数r、誤差の自由度df でのダンカン表の値、MSEは誤差の平均平方、 Hは例数の調和平均でsqrt()はルートをとることを示しています。

先週の分散分析での例題で考えてみましょう。 まず平均値を昇順に並べますと、飼料C、飼料A、飼料B となります。隣どうしを比較する時はr=2です。 誤差の自由度はMS-Excelの分析ツールの一元配置分散分析法では グループ内の自由度として表示されています。 また、誤差の平均平方はグループ内の分散になっています。 例数の調和平均は

1/H = (1/3)(1/9 + 1/9 + 1/8)

H = 8.64

q0.05(2,23)= 2.925

MSE = 0.00224

従ってMRTは

MRT = 2.925 sqrt( 0.00224/8.64) = 0.04709697

となります。 飼料Aと飼料Bの平均値の差は0.06444ですから有意差ありとなります。 同様に飼料Cと飼料Aの平均値の差は0.06514ですから、これも有意差 ありですね。

飼料Cと飼料Bを比較する場合は、r=3となりますので、 q0.05(3,23)=3.075を使って

MRT = 3.075 sqrt( 0.00224/8.64) = 0.0495122

飼料Cと飼料Bの平均値の差は0.12958ですから有意差ありとなります。

チューキーの多重範囲検定

チューキーの多重範囲検定は有意差はでにくいのですが、過誤の確率が 高くならないのが特徴です。ダンカン表のかわりにスチューデント化 されたQ値表を用います。

MRT = Qp(r,df) sqrt(MSE/H2)

H2は比較する2つの集団の例数の調和平均です。 飼料Aと飼料Bの場合は

1/ H2 = (1/2)(1/9 + 1/9)

H2 = 9.0

Q0.05(2,23)= 2.935

MRT = 2.935 sqrt(0.00224/9.0) = 0.04630318

となり有意差ありと結論付けられます。 飼料Cと飼料Bの比較の場合には

MRT = 3.555 sqrt(0.00224/8.470588) = 0.05781051

となりダンカンよりも大きな値となっていますが、有意差ありという 結論には変化はありませんでした。

大学院生、編入学生、転学生、募集中!

最終更新年月日 2008年10月1日

佐賀大学農学部 応用生物科学科 動物資源開発学分野 和田研究室

ywada@cc.saga-u.ac.jp