佐賀大学農学部応用生物科学科 生物情報処理演習 講義テキスト 科目ホームページ
しかしながら、個々の検定が95%の信頼度であったとしても、 総当たりで検定を行うと多重比較全体での信頼度ははるかに低いものに なってしまいます。 そこで、多重比較全体での信頼度をあげるためにいろいろな方法が 考案されてきました。ここでは、畜産分野で良く使われるダンカンの 多重範囲検定とチューキーの方法を取り上げます。
MRT = qp(r,df) sqrt(MSE/H)
ここで、qp(r,df)は確率p、処理の数r、誤差の自由度df でのダンカン表の値、MSEは誤差の平均平方、 Hは例数の調和平均でsqrt()はルートをとることを示しています。
先週の分散分析での例題で考えてみましょう。 まず平均値を昇順に並べますと、飼料C、飼料A、飼料B となります。隣どうしを比較する時はr=2です。 誤差の自由度はMS-Excelの分析ツールの一元配置分散分析法では グループ内の自由度として表示されています。 また、誤差の平均平方はグループ内の分散になっています。 例数の調和平均は
1/H = (1/3)(1/9 + 1/9 + 1/8)
H = 8.64
q0.05(2,23)= 2.925
MSE = 0.00224
従ってMRTは
MRT = 2.925 sqrt( 0.00224/8.64) = 0.04709697
となります。 飼料Aと飼料Bの平均値の差は0.06444ですから有意差ありとなります。 同様に飼料Cと飼料Aの平均値の差は0.06514ですから、これも有意差 ありですね。
飼料Cと飼料Bを比較する場合は、r=3となりますので、 q0.05(3,23)=3.075を使って
MRT = 3.075 sqrt( 0.00224/8.64) = 0.0495122
飼料Cと飼料Bの平均値の差は0.12958ですから有意差ありとなります。
MRT = Qp(r,df) sqrt(MSE/H2)
H2は比較する2つの集団の例数の調和平均です。 飼料Aと飼料Bの場合は
1/ H2 = (1/2)(1/9 + 1/9)
H2 = 9.0
Q0.05(2,23)= 2.935
MRT = 2.935 sqrt(0.00224/9.0) = 0.04630318
となり有意差ありと結論付けられます。 飼料Cと飼料Bの比較の場合には
MRT = 3.555 sqrt(0.00224/8.470588) = 0.05781051
となりダンカンよりも大きな値となっていますが、有意差ありという 結論には変化はありませんでした。
最終更新年月日 2008年10月1日