佐賀大学農学部応用生物科学科 生物情報処理演習 講義テキスト 科目ホームページ
豚の毛色を決める遺伝子座はいくつかありますが、I遺伝子座は 完全優性で毛色を白にする遺伝子座です。この遺伝子座はKITという 遺伝子の突然変異によって引き起こされています。 すなわち、イントロン17の最初の塩基がGからAに変化することにより エキソン17を欠失したmRNAが生産され、このmRNAの存在によって 毛色が白になるようです。
では、実際のデータを使って本当にメンデルの遺伝の法則通りに なっているかどうかを検定しましょう。 農林水産省畜産試験場では梅山豚(雌)とゲッチンゲンミニ豚(雄)の 交配から322頭のF2を生産しました。そのなかで毛色が白と判定された のは253頭で黒と判定されたものは69頭でした。梅山豚がii、 ゲッチンゲンミニ豚がIIであったと仮定した場合、白:黒は 理論的には3:1になるはずですね。
カテゴリーごとに観察値と期待値の差の二乗を期待値 で割ったものを計算し、それらの和がカイ自乗値になります。 まず期待値は、322頭の3/4は241.5頭、1/4は80.5頭ですね。 そうするとカイ自乗値は
(253-241.5)*(253-241.5)/241.5 + (69-80.5)*(69-80.5)/80.5 = 2.190476
となります。自由度が1の場合(カテゴリーが2の場合)はカイ自乗の値が 高めにでるので、観察値と期待値の差ではなくて 観察値と期待値の差から 0.5をひいたものを自乗します。すなわち
(253-241.5-0.5)*(253-241.5-0.5)/241.5 + (69-80.5-0.5)*(69-80.5-0.5)/80.5 = 2.289855
となります。 カイ自乗分布表の自由度1の確率0.05は3.84ですから、カイ自乗値2.289855は これより小さいので5%水準でも帰無仮説を棄却することはできませんでした。 この検定での帰無仮説は白:黒 = 3:1 ですから、この実験データは 梅山豚がii、ゲッチンゲンミニ豚がIIであったとする最初の仮定を 支持することになります。
最終更新年月日 2008年10月1日